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『本人・家族のこころの風景』を追体験するロールプレイ

更新日:6 日前

 11月に行われたメッセンジャーナースの会総会では、昨年に引き続き、メッセンジャー力の向上を目指したフォローアップセミナー「ロールプレイ」が行われました。


 メッセンジャーナースたちが事例の登場人物を演じ、その後に参加者との検討会が行われました。


 今回の事例は、咽頭癌の末期にある70歳男性で、胃瘻造設状態です。奥さんと二人暮らしで、二人の子どもは県外に住んでいます。ご本人にとって家族は、精神的な支えになっています。ただ本人は、「気管孔を腫瘍が塞いでしまうのでは」「気管孔に血液が流入するのでは」「出血が大きければ、そのまま死に直結する」などといった不安を抱えています。


 本音は「できれば家で家族に見守られながら最期を迎えたい」です。しかし、「苦しい、辛い、痛い」というよりも「気道が閉塞する」ことに恐怖があるため、すぐにも緩和ケアに入院したい意向を示されています。


 ロールプレイの場面設定です。自宅寝室兼リビングにて、患者本人、奥さん、訪問診療医師、訪問看護師が集い、「ご本人の気持ち、希望をあらためて確認する」ための在宅カンファレンスに臨んでいます。


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ロールプレイの一場面


 ご本人のお考えです。


・かかりつけの病院の緩和ケアへの入院をと勧められたが、自分から断っており、そのことへの後悔があります。

・自分の病態を熟知している病院の緩和ケア病棟なら入院したい、と考えています。

・現在エントリーをしている緩和ケア病棟は、自身も一緒に面談にいかれていますが、何となく冷たい印象を持ちました、と話されています。

・また、耳鼻科受診の際、入院をとご本人から望まれましたが、耳鼻科での治療対象ではないために、その日の状態では入院は難しいと説明を受けており、あらためて、冷たい、という印象を持たれていました。


 奥さんのお考えです。


・主人の希望するようにします。

・このまま在宅でと主人が決めたら、先生や看護師さん方にサポートしてもらいながら看て行きます。

・緩和ケアをと主人が望む場合には、できたら家に近い所が良いです。面会に行く時に慌てなくてすみます。

・主人が希望する病院の病床がすぐに空きがあるとは限らないので、早い方にお願いしたいです。

・腫瘍がますます大きくなって、出血も度々起きていて……。主人もですが、私も怖いです。一日でも早く受け入れてくださる病院が良いです。


 在宅カンファレンスの一場面です(動画)。なお、実際の訪問では、事前に以下の点を確認しています。


・緩和ケア病棟と連絡を取り、受け入れ態勢を確認する。

・搬送用の介護タクシーの手配(吸引が必要なため、ドライバーのみの介護タクシーではなく、ストレッチャーの準備、吸引器の準備、酸素の準備、実施する看護師の同乗など)する。

・緩和ケアへの搬送中に急変した場合の対応についても、奥さん、訪問診療医師、訪問看護師(メッセンジャーナース)で確認する。


動画 在宅カンファレンスの一場面


 在宅カンファレンスでは、「できれば家で家族に見守られながら最期を迎えたい」という、ご本人の意思が再確認されました。ただし、前述のように「気道が閉塞する」ことに恐怖があるのも事実です。そのため、いいところがあればすぐにでも緩和ケア病棟へ入院したいという意向でした。


 ここで、奥さんをはじめ、お二人のお子さんを含めた家族の存在に目を向けたいと思います。まず、奥さんが療養を手伝っていることに話が及びます。


 「私が手伝うと『そこ違う、違う』なんて言うんですよ。(訪問看護師の)瀬さんのときは、うれしそうに(ケアを)受けているのに……」(奥さん)


 「そうですか、うれしいです。きっと奥さんにだから言えることもあるんですよね」(訪問看護師)


 「ケアを担う家族には勲章をあげたらいいと思いますよ」(訪問医師)

 

 「本当ですね。先生、すごいです」(訪問看護師)


 次にお子さんの存在です。


 「子どもたちは会いたがっているんですが、本人が病気の姿を見せたくないと言って、断っているんです。…中略…でも、子どもたちには、お父さんに触れて、そのぬくもりや息遣いを覚えていてほしい、と言っているんですが……」(奥さん)


 本人からは、病気のせいで臭いが出ているのが気になるという趣旨の発言がありました。これに対処のすべがあると告げられると、「会いたい」との気持ちが吐露されたのでした。


 また、自分では入院するタイミングが分からないため、医師・看護師に「そのタイミングを逃さないでほしい」という強い思いがありました。在宅カンファレンスでは、「もうしばらく家にいる」という結論に達するのですが、「しばらく家に居る期間に看護師は何をサポートするのか」「医師と看護師は何をサポートすれば本人と奥さんは安心して過ごすことができるのか」が課題でした。


 結局、訪問看護の頻度をあげることで、緩和ケア病棟へ入院のタイミングを逃さないという結論となりました。同時に、お子さんの訪問を可能にするため、訪問看護の際に、病気のために出てしまう臭い対策も講じることにもなったのでした。



「患者・家族」の「こころの風景」と向き合う



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小濱智代子さん


 ロールプレイの企画を担当された小濱智代子さんは今回、以下の7項目をポイントに挙げています。

①プロフェッショナルの勘~精神の呼吸を感じる

②「精神の呼吸」を感じ取り、「勘どころ」をはずさない

③相手「患者・家族」の「こころの風景」と向き合う

④五感を駆使して、「看て、聴いて、意識して」行動する

⑤インフォームド・コンセントと不納得~心の二面性を探る

⑥認識のギャップは埋められる(不納得から納得へ)

⑦「極力自力」と「支援力」


 小濱さんは冒頭、ロールプレイの意義を語っています。訪問看護師は一人で活動することが多いため、「独りよがりになっていないか、自分がここで止まってしまうんじゃないか、慢心になるんじゃないのか」と自問することが多いのだそうです。こうした問いに小濱さんは、「事例を積まないといけない」と感じ、機会があるごとに事例検討セミナーに参加されました。その思いが、総会でのフォローアップセミナー「ロールプレイ」の実現につながったのでした。


 検討会の最後に、村松静子さんからコメントがありました。そのポイントは以下です。


・唾液、腫瘍、血液の混在する臭いへのケアの重要性

・臭いが充満する室内環境への配慮、ケアについて

・本人(患者)の声、希望、意志をどう聴くか、言っていただくか(本人の意志を、希望を確認するためにメッセンジャーナースは、この場面でどう対応するか、メッセンジャー力を発揮するか)

・「話していただく」「聴く」力の重要性


 なお、今回の配役は以下の通りです。ロールプレイ終了後には、会場から大きな拍手が沸き起こっていました。


ご本人;中村義美さん(大阪)

奥さん:作左部紀子さん(秋田)

訪問診療医師:春山ともみさん(千葉)

看護師(メッセンジャーナス):赤瀬佳代さん(岡山)



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