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外科医こそ善意が一番大切

6月22日
読了時間: 3分

更新日:10月19日

 「残しておきたい7人のコラム」から、安藤武士さんの「医師として、武士として」を紹介します。今回は「医療の質その3」です。


vol. 3

医療の質-その3

2002-10-25


 2回にわたり、『医療の質』の新しい定義について小生の意見を述べた。「高い医療の質」にせよ「良い医療の質」にせよ、「医療」は多くの医療人に支えられ成り立っている。昨今、医療人の質について語られる場合、医師については、誤診、水増し請求、改竄、隠蔽など「医者ほど悪い奴はいない」という論調で語られることが多くなってきている。医師の一人として慙愧の思いである。

 

 前回のコラムで「良質の医療」についてふれたが、その際、パソコンに「いいいりょう」と入力し漢字に転換すると『善い』という文字が表示された。さて『善』、『良』どちらだろうーと判断しかね、あれやこれや考えをめぐらしているうちに、小生が外科研修を始めたころ所属外科から渡された一冊の本を思い出した。私どもの大先達(1893年生*)が1958年に上梓した「外科今昔」という本である。その中に「外科医は善くなければならぬ」ということが記されているはずであった。眼前の書架に目をやると、その「外科今昔」をすぐ手にすることができた。懐かしさも手伝い、一気に読んだ。

 

 238頁から成る「外科今昔」は、著者、田中瑞穂教授が長年携わった外科治療学に関する所感が書かれている。最後の章『善い外科医』を要約し記す。この章の原文は5頁である。40数年を経ているが、全編、今日でも通用する内容である。文中の外科を医療、手術を治療、外科医を治療人と置き換えてお読みいただきたい。


 『外科は、単なる技術屋であれば事足るという風におもわれて来そうであるが、手術がその病人や家族にどう影響するか、物質的な判断以外の考慮も必要である。手術が必要な限り外科というものは善い外科医の存在が必須条件であろう。古今東西に通用することと思う。我欲をおさえ善意に徹するということは、必ずしも容易とは思わないが、外科医こそこの善意が一番大切である。学問が進み世の中が機械化すればする程このことが大切であると思う。善いとは何か、これは各自が独り静かに思いを致せば分かることである。口でもいえず、文字にするこことも難しい。自ら悟るいがいない。』


 善い医療人に支えられた医療が小生の求めている医療であるが、『善いとは何か』、答えはまだ出ていない。小生が『医療の質』の定義にこだわるのも、先達の教えのためかもしれない。


*「外科今昔」著者:田中瑞穂、明治26年生れ。大正6年東京帝国大学卒業。大正11年新潟大学助教授次いで教授。昭和31年停年。脳外科研究施設長事務取扱。本邦における脳外科学の先駆者。虚子門下生。 『深々と手術はすすむ深雪かな』-うろ覚えで正確さは欠くが、小生が雪深い新潟で手術をしていたころを思い出す俳句である。

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