ライフワークは「遠藤周作」
- mamoru segawa

- 11月3日
- 読了時間: 3分
更新日:7 時間前
原山建郎氏の新作『遠藤周作の「病い」と「神さま」』をシリーズでお届けいたします。今回は、プロローグ『ライフワークは「遠藤周作」』です。
プロローグ
☆ライフワークは「遠藤周作」
1982年に始まった「心あたたかな病院」キャンペーンに参加した私は、遠藤ボランティア・グループ(医療・介護施設での傾聴ボランティア活動)の顧問を命ぜられ、のちに代表兼顧問をつとめましたが、2025年3月、「クローバーの郷」(複合型介護施設)で、長年傾聴ボランティアをしている山崎洋子さんに同グループ代表をバトンパスしました。
ところで、2002年、56歳で主婦の友社を退職した私は、フリーの健康ジャーナリストとして取材・原稿執筆、講演活動と並行して、武蔵野大学、龍谷大学、文教大学などで教員(非常勤講師)をつとめていました。
そして、2016年秋、文教大学生涯学習課から、「原山さんは、遠藤周作の担当記者だったそうですね。遠藤文学をやさしく解説する講座をお願いします」とオファーがあり、翌年の春学期からオープン・ユニバーシティ(地域の社会人向け教養講座)で『「遠藤周作ワールド」を愉しむ――遠藤番記者が語る「遠藤周作の世界」』を担当することになりました。
その後も、『〈遠藤周作の名作〉を一緒に読む――人々の苦しみに寄り添う「人生の同伴者」イエス』、『文庫本で読む〈遠藤周作〉――新約聖書に書かれた「慰めの物語」』、『遠藤周作の「病い」と「神さま」その1――「心あたたかな病院」がほしい、日本の「良医」に訴える。』、『遠藤周作の「病い」と「神さま」その2――「心あたたかな医療」を支える女性たち』、『生誕100年/「病い」とともに生きた作家・遠藤周作』、『生誕100年/遠藤周作の願い「心あたたかな医療」はいま』などのテーマで、受講者とともに学ぶ機会を与えられました。
さらに、在宅看護研究センターL.L.P.のホームページに掲載した連載コラム「つたえること・つたわるもの」№194『「〈ゆるし〉のちから」―三浦綾子/「誰にも人生の踏絵がある」―遠藤周作』では、桜美林大学准教授・長谷川(間瀬)恵美さんの研究論文「遠藤周作とキリスト教の実生化」にヒントを得て、『氷点』(三浦綾子)、『沈黙』(遠藤周作)における「キリスト教の実生化」について考えました。
日本を代表するキリスト教作家、三浦綾子さん、遠藤周作さんがめざしたものは、戦国時代(1549年)、西欧のイエズス会から派遣された宣教師、フランシスコ・ザビエルらによって伝えられた「舶来」のキリスト教を、そのまま「接ぎ木・挿し木」したクローン(遺伝子コピー、栄養生殖)ではありません。
日本の宗教風土にポトリと落ちた「ひと粒の麦(福音)」が、日本で実生化(有性生殖で作られた種子から小さな苗が発芽)したキリスト教であり、日本人のキリスト教を求めてやまなかった三浦さん、そして遠藤さんが自らの「病い」を深く見つめ、「神さま」を祈り求めた人生を通して――お二人の歴史的身体(精神的土壌)を通して発芽した苗に花が咲き、やがて三浦さんは『氷点』『続氷点』、遠藤さんは『沈黙』『侍』などの作品を、21世紀に生きる、私たち日本人のこころに届く――「果実」として世に送り出したのです。
(連載コラム「つたえること・つたわるもの」№194、2025年7月掲載)
初めて遠藤さんにお会いした日から、57年。遠藤さんが帰天された日から、25年。「心あたたかな病院」キャンペーンが始まった日から、43年の歳月が流れました。
ライフワークは「遠藤周作」です。









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