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外来受診時に看護が必要とされた事例

 在宅看護研究センター付属訪問看護ステーションのケースの紹介です。外来受診時に看護が必要とされた事例です。

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■外来受診同行


 Aさんは80歳台でお気に入りの一軒家に一人暮らし。直腸がんの末期状態であったが、「家だとおいしいものが食べられる」という理由から在宅療養に踏み切った。在宅療養中のお世話は、親戚や知人が協力して行っていた。部屋の中を温かくし、痛みに応じてナースと相談しながらモルヒネの使用を工夫することで、Aさんはおいしいものを食べて穏やかな日を過ごすことができつつあった。


 Aさんは退院後も2週間に一度、外来受診をしていた。しかし、車に揺られて病院まで行く道のり、外来の待ち時間に必ず誘発される激痛は、Aさんにとって恐怖であった。そのような思いをしてまで通っても、外来受診時には痛みのためもうろうとして、自分の状況や思いをうまく医師に伝えられないAさんがいた。Aさんを病院に連れて行く知人にとっても、外来受診は苦痛となっていた。そういった状況の中、訪問看護師としてAさんの外来受診に同行することになった。あらかじめ病院と連絡を取り合い、外来受診時間の調整を図ってもらい、外来看護師にAさんの状況を説明し、ベッドの確保や薬の用意など予想できるトラブルへの対応をお願いした。


 外来受診日は出発前にAさん宅を訪問し、痛みに備えて臨時の痛み止めを服用してもらった。腰にホットタオルと毛布を巻きつけ、車内の防寒対策を施した上で、Aさんに車の後部座席に横になってもらい、「痛くなったときは痛み止めを握り締めてるから、すぐに飲んで楽になりましょうね」とナースも手を握りながら一緒に病院に行った。それでも病院到着後、いつものように痛みが出現してきた。訪問看護師は外来看護師と相談し、あらかじめ用意しておいてもらったベッドに横になってもらい即効性の痛み止めを使用してもらった。


 徐々にAさんは落ち着いてきて、外来の順番が30分位でやってきた。医師がAさんに「どうですか?」と尋ねた時、Aさんは「大丈夫です」と答えた。医師の前では恐縮してしまい、日頃の自分の思いをうまく伝えることのできないAさんがいた。一緒にAさんの周りを取り巻いていたナースは、家や外来待ち時間の状況を振り返り、Aさんの言っていた言葉などを繰り返し、ゆっくりとAさんの日頃の訴えを医師に表出しやすい雰囲気作りに努めた。


 Aさんは外来受診が辛いこと、痛みがあること、治療のことなど医師に話すことができ、医師と一緒に今後の方向性について考えることができた。外来受診後、再度、ナースと手を握りながら車に揺られて帰宅したAさんからは「私はうまく、先生に自分のこと言えていた? 今日は良かった」と笑顔が見られた。Aさんの外来受診はこの日からよほどの変化がない限り、往診の先生に任せて不要ということになり、痛み止めや治療薬もAさんの状態に合わせたものに変更された。


 現在、訪問看護師の外来受診同行は医療保険の範囲内では困難な状況である。しかし、Aさんの症状・不安への対応、受診環境の整備、Aさんの望む医療を医師に伝えるためのお手伝いなど、外来受診時に看護が必要とされていることは、多々あるように感じた一日だった。


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