「必要なときの必要な看護」が抜け落ちている
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「残しておきたい7人のコラム」から、村松静子さんの「起業家ナースのつぶやき」を紹介しています。今回は『介護保険制度が抱える問題~看護にこだわる開業ナースの視点から』です。

vol.32
介護保険制度が抱える問題~看護にこだわる開業ナースの視点から
2004-03-17
とにもかくにも見切り発車してしまった介護保険制度であったが、すでに丸4年を迎えようとしている。時の流れとは早いもので、わが身も刻一刻と利用者側の年齢に近づいている。制度枠での諸サービスの数も、あれよあれよという間に増えて、どこへ行ってもそれらしき看板や車が1つや2つ否が応でも目に入るようになった。数が増えた。やっぱり制度の発足は成功した。
定着してきているという受け止めもあるのだが? さて?
発足当初、私はその仕組みや申請・認定の流れ、加えてケアプランなる存在やケアマネジャーの導入方法などに、いくつかの疑問や不満を抱いていた。いわゆる見切り発車、反対派であった。しかし今や、それらの疑問や不満が解消されたのかというと、決してそうではない。今でも問題ばかりが目に付いている。
介護保険制度上の訪問看護サービスは介護サービスと同じく、ケアプランに組み込まれて進められることになる。予定の日の予定時間枠で行うということである。しかし、介護もそうなのだが、看護は特に、その性質上、ケアプランの中で定められた予定日時だけではその意味を為せない場合も多い。なぜなら、看護サービスは「必要なときに駆けつけ、必要な看護を提供し、常に予測をして行動するところに価値がある」からである。
容態の変化に気づいたときなど、訪問時間を調整し、延長してでも対応するのは当然のことである。医師へその状況を報告し、その後の訪問頻度を増やさざるを得ないことも起こってくる。一方、訪問時間を短縮したり、訪問回数を減らすことも出てくる。つまり訪問看護師は、独自の判断に加え、医師との連携をはかることによって速やかに行動できないのなら、その存在価値も半減するといえる。
以上の考えの下に介護保険の現状をのぞいてみると、意外なことが浮上してくる。看護サービスがケアマネジャーの作成したケアプランに組みまれているがために、本来、「必要なときの必要な看護」が抜け落ちているのである。理想的な看護を進める上で、ケアプランやケアマネジャーの言動がネックになっていることが多いのである。
ここで、訪問看護のサービス内容に変更が生じ、単位数が変わったとしよう。このような状況はよくあるパターンである。しかしその変更が生じたことによって、その後費やされる連携時間と通信費、さらには連携と称するやりとりの中での心の葛藤など、その負担は想像以上に多い。変更等が生じた場合は、速やかにケアマネジャーへ連絡をすることになる。訪問看護師のメインの業務は看護なのだから訪問の合間を縫って、変更が生じた状況等について報告する。それは電話またはファックスで行う。ケアプランの枠内に単位数が収まりきらないことも出てくる。その場合は自費扱いになる。家族はそれを承知し、それでも「看護師さんに来てほしい」と言う。
しかし、ここで不可思議なことが起こる。「看護は点数が高いんですよね」とケアマネジャーでありながら苦情のように一言加える。この程度のことはたびたびあると担当者は言う。実際にはそこで終わるわけではないのだ。日々の訪問から既に報告済みにもかかわらず、レセプト請求書作成時に、再び厄介な事態が起こる。ケアマネジャーから修正後の連絡やファックスが届くことになっているのだが、自動的に届くケースはわずかしかいない。結局、訪問した側から催促しなければならない。そして、催促しようにも不在のことが多く、今度は連絡がとれない。四苦八苦してどうにか連絡がとれたとしても、「今、保留中です」「もうこちらは提出しました(互いの確認がなされていないにもかかわらず)」「まだできていません」。そんなこんなでストレスが増大する。さらに、それでも終わらないのである。レセプト提出期日の間際になって、「枠に収まらなかったのでやっぱり自費で」と言ってくる。ぎりぎりのどんでん返しである。それでも安心できないと担当者は言う。とにかく振り回されているのだ。
介護保険制度上では、看護サービスもまたケアマネジャーが作成したケアプランに沿って提供することを理解はしているが、納得はできていない私がいる。利用者が在宅で心地よく過ごすためには介護は重要、しかし、それだけでは担えきれない状況もある。訪問看護師の見極めが即座に活かされるような柔軟性のある方法論を早急に編み出す必要があるのではないか。もちろん、状況判断・見極め・行動化できる訪問看護師という条件付であることは言うまでもない。枠にはめ込む看護は、本来の看護の姿ではない。緊急時訪問看護加算・特別管理加算の使い方に関してもしかりである。看護サービスは、主治医からの訪問看護指示書とケアマネからのサービス提供票が揃ってから訪問開始となる。しかし、それらは順当に行われているとはいえない。訪問看護指示書のみで訪問を開始し、サービス提供票はその終了後、頼み込んでやっと揃うというのが実情である。

看護は、必要なときに、必要な看護を、必要なだけ行わなければ意味がない。年齢問わず、どんな重症であろうとも、療養者とその家族が在宅での療養を望む限り、その思いを支えたいと願い、必死に取り組む看護師にとって、介護保険制度はあまりに余分な負担が多く、以前より増して訪問しずらくなっているのは見逃せない事実なのである。


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