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医師の高圧的な態度が怖くて

 メッセンジャーナースの活動の紹介です。医療総合媒体の日経メディカルで、連載「患者と医師の認識ギャップ考」を展開していました。日経BPの了承が得られましたので、シリーズで掲載していきます。


 第13回目は、小田 直美さん(総合リハビリテーションセンターみどり病院)の記事です。テーマは『医師の高圧的な態度が怖くて』(ご略歴などは執筆当時のものです。ご了承ください)。



患者は不安の中で受診しているのに

医師の高圧的な態度が怖くて


小田 直美(総合リハビリテーションセンターみどり病院)

2017/04/03


 事務員として働いているAさんが、受診のため仕事を休んだ翌日、書類整理をしに看護部長室に来ました。看護部長であり上司でもある私は受診結果が気になり、Aさんに「どうだった?」と聞きました。すると「あの医師にこれから診てもらわなければならないと思うと、気が重く受診したくなくなる」「入院・手術となった場合、とっても耐えられないかもしれない」と訴え、受診時の状況を話し始めました。


 Aさんは、開業医から「大腸癌だと思われるため、大きな病院で診てもらってください」と紹介状を渡されたのです。後日、その紹介状を持って、一人で市内の大きな病院を受診しました。


 Aさんは、病気への心配と大きな病院に受診をするというだけで不安を感じ、ドキドキしながら名前を呼ばれるのを待っていました。診察室に入ると、40歳代の見るからに無愛想な感じの医師と事務員がいました。医師は、紹介状を見ながら病気のことやこれからの検査のことなどを説明してくれたのですが、Aさんは医師の高圧的な言動・態度が怖くて何も言えず、話を聞くだけで診察は終わりました。


 私は、診察室に看護師がいなかったのと尋ねました。もし看護師がいたら、医師の性格も知っており高圧的な態度のフォローと、Aさんの様子をみて何らかの声掛けをし、医師とAさんの間に入り会話ができる雰囲気づくりをしてくれたのではないか、と考えたからです。外来に看護師が全くいないことはないと思い、Aさんには「今度、受診するときは看護師も診察室にいてもらうようにした方がいいね。看護師が上手くフォローしてくれると思うから」と話しました。


 その病院には、癌の認定看護師が数人いるはずでした。その看護師達はどのような動きをしているのか? また、外来体制がどのようになっているのかは分かりません。そこで、直接病院の看護部長さんに電話をし、まずAさんが感じたことを簡単に説明、その上でどのような先生なのか、外来で困ったときはどの看護師に話をしたらよいのかなど、情報を得ることにしました。


 その結果、看護部長さんより「外来には必ず認定看護師がいるので、遠慮なく声を掛けてください」と言われ、Aさんにそのことを伝えました。


 検査結果を聞くために受診したAさんは、外来の看護師に声を掛け、診察室にいてもらうように頼みました。先生と1対1でなく、看護師がそばにいてくれるだけで緊張しなかったそうです。部屋を出てからも、「大丈夫でしたか?」と声を掛けてもらい、それだけでほっとしたと、後日、話してくれました。


 ただ、医師の態度は全く変わっていなかったようです。Aさんは「このような医師なのだと思うしかない。腕は良いみたいだから」と自分自身を納得させていました。その後も、多少はその時々で態度に変化はみられたものの基本は変わらなかったようです。


 Aさんは、入院し手術をすることになりました。退院日まで毎日、私とはLINEのやり取りをしていました。その中でAさんから言われたことは、「病院の人は、病気の患者さんが来ることが当たり前の世界。でも患者さんは個人、一人ひとりは不安の中、受診しているのだと知っていてほしい」「家族以外で、気にかけてくれる人がいるのはとても心強い」でした。


 以前より、外来の看護師数は減っています。医師の側にいるのは医師事務作業補助者だけ、という病院が多くなってきているのではないでしょうか。医師の話を聞きいたときの、患者・家族の表情や思いを誰が気づいてくれるのでしょう。察してくれる医師であればよいのですが、そうでなければ不安・不満を持ったまま患者・家族は帰宅することになります。このような状況をなくすための策を早急に考えなければ、悩み・苦しむ方達が増加するばかりです。


■著者紹介

小田 直美(おだ なおみ)

2003年に認定看護管理者の認定を取得。9年前より看護部長を務めるようになり数カ所異動後、現在は総合リハビリテーションセンターみどり病院で看護部長として働いている。5年前メッセンジャーナースSA認定を取得、その年から年数回の市民講座・相談室の開催を継続し、現在に至る。



日経メディカル Online 2017年4月3日掲載

日経BPの了承を得て掲載しています

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