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"最期は家で"の思いを果たした

 残しておきたい7人のコラム」から、村松静子さんの「起業家ナースのつぶやき」を紹介しています。今回は「この時期になると浮かんでくるあの光景 その2」です。


vol. 8

この時期になると浮かんでくるあの光景 その2 

2002-1-1

  

 本来なら、せめてのんびり過ごしたいのが年末・年始です。


 今年は力強いスタッフのお陰で、のんびり過ごさせてもらっている私ですが、この時期になると思い浮かんでくる光景があります。在宅医療体制がほとんど整っていない十数年前のことでした。


 『主人がどうしても家にいたいらしいの。

  でも、近くの開業医はお休みで、病院の医者は病院へ連れてきなさいと言う。

  素人の私がみてもとても悪い状態なので、

  もしものことがあったらどうしようと思ってしまう。

  心配でじっとしていられない。どうしたらいいのかしら。

  私はできたら主人がしたいと思うようにしてあげたいのだけど、

  死んでからでは救急車は使えないというし、

  死亡診断書を書いてもらうには入院させなければいけないらしい。

  入院は主人がいやだと言うし・・・』


 そこで、家族が望んでいる開業医やその周辺の診療所を探しましたが、皆、年末・年始の往診は無理とのことでした。そうこうしている間に魔の年末に突入、必要なときの在宅医療が閉ざされる時期に入ってしまったのです。


 12月31日の昼過ぎ、

 『様子が昨日とは違う。もうダメかもしれない。どうしよう。すぐ来てほしい』


 電話の奥から聞こえる妻の悲壮な声に、緊急対応の当番ナースが駆けつけました。


 そして午後3時半、彼女から電話報告が入ります。


 『非常に危険な状態で、病院へ運ぶなら今しかないと思う。

  しかし、本人は話すことは出来ないが、入院という言葉にははっきり首を横に振る。

  妻は不安が強く、迷っている。

  本当は最期まで家に居させてあげたいが死亡確認のために病院へ運んだり、

  解剖されたりするのはいやとも言っている』


 私たちは話し合う中で決心しました。


 -妻が安心して家で看とれるようにしよう-


 妻に代わって直接伝えました。


 -必ず死亡確認をしてくださるお医者さんを探しますので、

  安心してご主人のそばに居てあげてください。いつものように手を握って-と。

しかし、言うは易く行なうは難し。私は電話を前に正直悩んでしまいました。

そして思い浮かんだ医師の名前、ICUを共に築いた頼れる医師です。


 "最期は家で"の思いを果たしたその方は、妻や駆けつけた多くの親族に囲まれて、

あたかも眠っているかのようでした。その情景を目の当たりにし、

 『良かった。本当に良かった』

という妻の言葉にホッとした私たちは、家を出て、ドクターと握手を交わして別れました。

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記事: Blog2 Post

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