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"心からの愛と感謝をこめて……E家族"

  • 1 日前
  • 読了時間: 3分

 「残しておきたい7人のコラム」から、村松静子さんの「起業家ナースのつぶやき」を紹介しています。今回は「点滴生活雑感」です。

vol. 16

点滴生活雑感

2002-8-30


 76歳の男性が書かれた『点滴生活雑感』を、私は複雑な心境で読んでいた。もう18年も前のこと、私はその頃、病院から看護短大へ出向していたが、一方で、訪問看護のボランティアも行っていた。実習病棟で学生の受け持ちだった42歳の男性が発した言葉と『点滴生活雑感』とが妙に重なってくるのである。


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 「私は1年前にガンを告知されました。そして再発しました。手術したときは、医者も看護師もうるさいほどそばにきて、酸素をいじったり、採血をしたり、血圧をはかったり、吸入をさせたりしました。それなのに、誰も私の不安な心には目を向けてくれないんです。看護師さんは'どうですか'と言ってはくださる。しかしその瞬間、もう点滴をいじったり、お小水のバッグをいじったりして、背中を向けているじゃないですか。医者は、私の部屋の前を通っても下を向いて通り過ぎ、鼻血が出るとそこだけをめがけてやってくる。こんなんだったら、告知なんかされなきゃ良かった。私は自分の身体が、今どの様な状況になっているのかを知りたいのに何も説明してくれない。みんな'今だったら家に帰れますよ。お帰りになったらどうですか'とは言ってくれる。私だって帰りたいですよ。でも、点滴が付いていて、痛みがあって、一人では何もできない私が帰って、一体誰がみてくれるというのですか。結局は母や妻や子どもたちにみてもらうしかないじゃないですか。そうしたら、家に帰りたいなんて言えませんよ。先生、早く動けなくなった私たちが帰れるようなシステムをつくってください」


 彼は、学生の実習終了時に1枚のカードを手渡してくれた。そこには家族全員が映っている写真と、3人の子ども・妻・母親・本人一人ひとりの言葉がそれぞれの自筆で記され、こんな言葉で結ばれていた。


"心からの愛と感謝をこめて……E家族"


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『点滴生活雑感』


 およそ世の中の人で、病院とか入院、医師や薬の好きな人はおそらく居まい。不幸にして、病を得て初めて医師や薬のお世話になる。


 それで経過が良ければ感謝もされるが、悪ければ感情は逆だ。


 では、看護師はどうだ。天使といわれるだけあって、医師や薬ほど嫌われてはいない。良く世話をしてもらえば天使と患者は思うだろう。


 中には滴下速度と点滴残量ばかリを計算器ではじき出し、患者の体調など無視している人もいるが、要は看護師に押し付けられているルーチンワークが多すぎるのではないか。それが患者を煩わせている面も多い。


 糖尿病があるからといって、食事もしない点滴患者に食事時に3度の採血検査が必要なのか。


 高齢化とともに病人の数はますます増え、病院に入院するには、3~4ヶ月順番待ちとか。金にいとめをつけぬ人はともかく、一般社会人はただ待つより仕方がないという後進国と同じ現状だ。


 在宅看護に切り替えて良かったと思っている。幸い経過も良い。良くなるはずだと信じている。


 看護師と家族が一体となって看護してくれているからだ。もうとても病院には帰れない。帰るつもりもない。


 更に現在の医療保険制度や介護保険制度は、庶民にとっては有り難い制度だ。


 在宅看護制度を今後更に強化進展させることを望んでやまない。  


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 私はフッと思った。「今の時代ならEさんも家へ帰れただろうか」


 あの状態であれば帰れたかもしれない。いや、地方出身の彼は帰らなかっただろう。24時間365日、必要な時、必要な看護が、どこでも受けられるシステムは未だ整備されていない。彼の経過は良くなく、あのカードをくださった2週間後に逝った。


 私は未だEさんとの約束を果たしていない。

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