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『この人になら任せられる。お願いしたい』

  • 13 時間前
  • 読了時間: 4分

 「残しておきたい7人のコラム」から、村松静子さんの「起業家ナースのつぶやき」を紹介しています。今回は「ナースの私が抱く疑問~2.静脈注射」です。


vol.25

ナースの私が抱く疑問~2.静脈注射

2003-06-12

 

 2003年6月、厚生労働相は、ヘルパーの吸引解禁について「ALSで認めることになれば、他の病気にも相応の対応を進めるのが妥当」との判断を示したうえで、「介護士も訓練を積んでいろいろなことができるようになっている。医師や看護師でなければできないということではなく、段階的に拡大していかなければいけない」と述べ、さらに「できることはみんながやれるようにしていきたい」と今後の意向をも述べている。


 看護師である私も、それぞれが一定の基準に達しているのであればそれでいいのだと思う。


 しかし疑問も残る。解禁の必要性は十分わかってはいるが、なぜ疾病を限って突然に解禁するのか。また、なぜ今、「できることはみんながやれるようにしていきたい」などと発言したのか。そして疑問は続く。静脈注射を看護師がしなければならない状況は確かにある。しかし、なぜ診療の補助の範疇なのか。看護業務をどのようにとらえているのか。


 在宅への医療器材の導入が増え、ターミナルが増え続けている中で、なぜ、介護保険下での緊急時訪問看護加算1,370単位が540単位に引き下げられたのか。ターミナル期の看護をどのように受け止めているのか。長年在宅看護にたずさわり、数多くの在宅死を看とってきた私の心には何か寂しさが込み上げてくる。


 2002年9月30日付けで、厚生労働省は次のような通知を発出している。「静脈注射は、医師や歯科医師が自ら行うべき業務であって、保健師助産師看護師法第5条に規定する看護師の範囲を超えるものであるとしてきたところであるが、今後は規定する診療の補助行為の範疇として取り扱うものとする」。ここで、静脈注射の施行が明らかに看護師等による診療の補助の範疇として認められたことになる。さらに記されている。


 ただし、薬剤の血管注入による身体への影響が大きいことに変わりはないため、医師又は歯科医師の指示に基づいて、看護師等が静脈注射を安全に実施できるよう、医療機関及び看護師等学校養成所に対して、次のような対応について周知方お願いいたしたい。


(1)医療機関においては、看護師等を対象にした研修を実施するとともに、静脈注射の実施等に関して、施設内基準や看護手順の作成・見直しを行い、また個々の看護師等の能力を踏まえた適切な業務分担を行うこと。


(2)看護師等学校養成所においては、薬理作用、静脈注射に関する知識・技術、感染・安全対策などの教育を見直し、必要に応じて強化すること。


 確かに私も、苦しむがん患者を前に、「私が痛みのコントロールのために薬の量を調整できたらいいのに。なぜ看護師の私ではダメなんだ」と悔しく思ったこともあった。「経口で無理なら静脈から水分補給できたらきっとだるさがとれるのに。看護師にできることはこれしかない」と情けなく思ったことはあった。しかし改めて考えると、ICUや救急の場、内科・外科・脳外科等さまざまな領域を体験してきたとはいえ、看護のプロである私の本業は、あくまで相手に向き合い、その人に最も合った方法を見出して、看護ケアを提供するところにある。そう考えたとき、医療行為を先行させた今回の発令には疑問が残る。ケアを+αにしていくような錯覚に陥いらせたり、それを強要するようなっていくようでは困るからだ。「できることをみんなでやる」という方針で医療行為が進められていくことは怖いことである。『この人に今本当に医療行為が必要なのか』の議論が遠ざかり、極論では『医療行為が必要だからみんなでやろう』ということにもなる。医療費が増大している意味、医療費に組み込まなければならない看護サービスの具体的内容についてももっと真剣に検討していただきたいと私は願っている。そしてさらに『この人になら任せられる。お願いしたい』『私なら責任を持って行える。行わせていただく』というお互いの信頼と評価を得る関係性を条件づけることも検討していただきたい。


 医療器材の装着が1つ増えれば、療養者・家族の不安や苦痛はさらに増大する。私はその状況を一看護師として長い間何度も目の当たりにしてきた。静脈注射をすることに反対しているのではない。しかし、もっと検討すべきことがように思うのである。

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