『医療の質』の定義が変わった
- 6月14日
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「残しておきたい7人のコラム」から、安藤武士さんの「医師として、武士として」を紹介します。今回は「医療の質」です。

vol. 1
医療の質
2002-9-17
近着の医療雑誌に、『医療の質』の定義が変わったという表題の文章が目に入った。
従来は、大学の研究室で開発された「困難で複雑な医療」を「高い医療の質」と考えていた。しかし、この数年、医療先進国で重大な医療事故が発生するようになり「医療の質」に対する国民の意識が変わってきた。国民は、「曲芸的で、危険であるが効果があるかもしれない医療」より「科学的な根拠にもとづく有効と思われる医療をそのレベルまで行う」ことを求めており、「ごく普通の医療を普通に行う」ことが「高い医療の質」の新しい定義であるという。
小生は、今まで『医療の質』とは……について、深刻に考えたことはなかったように思う。漠然とではあるが、病の人を助けたいという熱い気持ちが強ければ、おのずから今まで助けることが出来なかった病気に対する治療法を研究・開発し、さらに普遍的なものになるよう努力するはずである。それを実現することの出来る医師、医療施設こそ「高い医療の質」を有しており、「ごく普通の医療を普通に行う」ことは、医師であれば誰でもできると思っていた。多くの医師は、研究・開発に強い憧れを持っている。新しい定義は、従来の医師の価値観を否定し、新しい価値観をもった医師の誕生を促している。
しかし、新しい定義に声高に異を唱えるわけではないが、新しい医療を開発しなければならない病気は星の数ほどある。それに携わる医師が提供する『医療の質』をどのように定義すればよいのであろうか。やはり「高い医療の質」と言っていいのではないか。「高質」と「良質」の違いという言葉の遊びになるかもしれないが、「ごく普通の医療を普通に行う」ことは「質の良い医療を行うこと」と定義したほうが響きがよいように思う。
どのような定義にせよ、「ごく普通の医療を普通に行う」ことが大切であることには異論はない。新しい定義は、「マニュアル医師」の育成を促すという負の要素も含んでいるが医師の価値観を変え、延いては日本の医療を変えるという重要な意味をもっており、20年後、30年後の日本の医療の姿を根本的に変えるであろう。


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