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「味な」医療、「味のある」心遣い

  • 43 分前
  • 読了時間: 4分

 「残しておきたい7人のコラム」から、村松静子さんの「起業家ナースのつぶやき」を紹介しています。今回は「素敵なエッセイの贈り物」です。


vol.26

素敵なエッセイの贈り物

2003-07-22



 このところ心豊かな人たちにお目にかかる機会が続いて、滅入りがちの気持ちが救われていた私に、またまたうれしい1枚のファックスが届いた。


 「村松静子様 京都へ講演に参りました折、知り合いの方から頂いて来ました。あまり素敵なエッセイでしたのでお目にかけます。」


 メッセージが添えられたその記事は、京都新聞 2003年7月6日付の・天眼・というコーナーであった。そのタイトルは『「味な」医療を』、臨床心理学者の河合隼雄先生が執筆されたものである。十年近く前のこと、日本臨床心理士会主催の『こころの健康会議』に出席した私は、そこで初めて先生の講演を聴いた。そして、話の奥の深さにぐんぐん引き込まれ、いつの間にか'教育とはどうあるべきか'を考えるに到っていた。それほどに、味のある講演だったのである。


 当時のことを思い出しながら、私はその記事を読み込んで行った。


 『……今回ここに取りあげたいのは、これらのこととまったく異なり、「心」のことでありながら、医療のなかで無視されているのではないか、と思うことを書いてみたい。それは病院の食事のことである。なんだ、食物のことか、と思わないでいただきたい。食物は「心」と密接に結びついている。特に病気のときはそうではないだろうか。最近、知人を病院にお見舞いして、病院食のまずさを嘆かれることが続いたので、これは重大なことだと思ったのである。病院食に配慮がないなどとは言わない。栄養の点はよく考えられている。もちろん病気によって、食物の配合は調整されている。しかし、私の言いたいのは、「味」なのである。・・・食事は癒すことに深く関係しているのではなかろうか。・・・青森にある「森のイスキア」の佐藤初女さんは、ともかくそこを訪れた人に、心のこもった料理を食べていただくことのみを大切にしている。……その佐藤さんの作られた、おむすびを食べて、自殺企図をもっていた青年が、自殺を思いとどまった、という有名な話である。おむすびを通じて、心が触れ合い、自殺をとめたのである。……病院にいる患者さんたちは、もちろん身体の病で入院しているのだろうが、心の傷もあるだろうし、心と体が密接につながっていることから考えても、心のこもった味のする食事によって、ずいぶんと癒されるのではないだろうか。……それほど高価なものを使わなくても、食べる人の身になって、おいしく食べてもらおうと配慮するだけで、大変な違いになるだろう。……ここに述べたことは、実は医療のことだけではない。数量化されやすい栄養にのみ注意して、「味」のことを忘れる、というのは、日本中のあらゆるところに生じているように思う。いろんなところで、「味のある」心遣いが必要であろう。』


 読みながらいろいろなことを思い出していた。


 「看護師さん、俺、食欲がないんだよ。病院の食事じゃあ、食べたいと思わないよ」と言われた私は、どんぶり飯を4個の小さなおにぎりに変身させた。「食べてほしいのですが、私にできるのはこれだけ」と言って、目の前にそっと置いた。「これなら食えるよ。食ってみたいよ」と言いながら即座に手を伸ばし、3個のおにぎりをあっという間に食べてくれた。「ありがとさん」。ガン末期のその人の目に涙が光っていた。新卒当時の私の姿である。


 「医師も看護師も、あなたたちは本当によくやりますねって言うんです。私は、そんなこと何も言ってほしくなかった。それより、医療者なら妻に合った薬を、妻の一品料理をつくってほしかった。それなのに、誰にも同じものを使い、同じものを出しているじゃないですか。」吐き出すように言ったKさんは、妻を看取って15年が過ぎ、今、盲導犬育成ボランティアなど、様々なことを行っている。


 社会のなかで忘れかけられている「味な」医療、「味のある」心遣いは、本来、誰しもが求めることであり、個人個人がその必要性を感じて行動すれば可能なことだと私は思う。しかし、どうすれば「心」を込めて行動できるようになるのだろうか。その難題が潜んでいる。

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