私たちの独立開業が認められた日
「残しておきたい7人のコラム」から、村松静子さんの「起業家ナースのつぶやき」を紹介しています。今回は『在宅看護研究センター20回設立記念日を迎えて』です。

vol.38
在宅看護研究センター20回設立記念日を迎えて
2005-3-24
3月24日は、私にとって忘れられない日である。看護の独立をめざして、在宅看護研究センターを設立しようと立ち上がり、法の壁を乗り越えて、私たちが独立開業することが認められた日だったからだ。
人間味のある温かな人柄の公証人は笑顔で語りかけてくれた。
「訪問看護ってどんなことをするんですか。・・これは大事な仕事ですね。・・頑張ってくださいよ」
その言葉に、たった2.5人の看護師だけで、まったく未経験の領域に踏み入っていく面白さは、まるで冒険のようで、日常ではなかなか味わえない高揚感を味わっていた。そこまでは思い通りにことが運んでいたのだから、鼻歌の1つも出そうであったのを覚えている。
そして3月24日、作成した定款を登記所へ届けたのだった。3月28日、その日は確か雨だった。運がついて回っているはずの私を、その運から引き離そうとするような事態が待ち構えていたのだ。登記所で名を呼ばれた私は、何となく嫌な予感がした。
登記官が切り出した。
「訪問看護って何ですか。看護婦と家政婦ってどこが違うんですか。これは、労働省の方ではないんですか」
内心穏やかではなくなった私。その後はしばらく押し問答が続いた。
「看護婦の仕事と家政婦の仕事は全然違いますよ。それに付き添い看護と訪問看護も違いますし」
「看護婦って、会社は作れないんじゃないかなあ」
「そんなことはないんじゃないですか」
「医療法にひっかかるんじゃないかなあ」
「ちょっと調べていただけませんか。保健婦助産婦看護婦法というのがあるはずですが」
登記官は、ズラリと並んだ法律書の1つひとつを調べてくれたが、保健婦助産婦看護婦法が記載されている法律書はどこにも見当たらなかった。
「医療法の中には入っておりませんか」
訪問看護事業を始めたいという一心で突っ走ってきた中に、熱い怒りの感情が突き上げてきているのを感じていた。
その後もいろいろあった。承認されたのは4月16日だった。
「この定款の中にうたわれている目的を変更した方がいいですねえ。患者さんに直接手を出すことは、すべて医療行為になってしまうから、訪問看護というのもダメだし、慢性疾患患者の指導、つまり、病気に関する指導というのももちろんダメだし・・」
忘れられないいくつかの言葉もある。
「厚生省では、看護婦だけでこのような形をとるのは初めてなんで、良い悪いとはいえない。何とかしてあげたいのは山々だがって言っているんですよ」
「看護婦が施設を一歩外へ出たら法律的には家政婦と同じなのよ。今の法律の範囲で事を進めていくとしたら、あなたたちのところに医師を置かなければダメでしょうね」。
看護師の国家資格って何なのか。ともあれ、3月24日、遡って登記されたのだった。
時代は変わった。しかし、今のままの看護師ではいけない。気を引き締めて、先を見据える私がいる。



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